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第20章 奪われたキス

「おいおい…マジかよ…屋敷って言ってたけど、これって城じゃね?」

ベースのトモキは、咥えタバコなのを忘れて、ポロリと膝の上にタバコを落とし慌てた。俺は、あの日の出来事を鮮明に思い出した。

「華ちゃんの家って金持ちだったんだな。」

いつもは静かなドラムのトオルが、身を乗り出す様にして、“城”を眺めていた。敷地内にはテニスコートやプールなどがあった。

…すっげ。

流石に俺もこれには驚いた。春さんが大きな玄関の前でにこにこしながら待っていた。

「いらっしゃい♪どうぞ中に入って。」

アール・ヌーボー調の建物の中はまるで小さな美術館のようだった。
あいつとリツが嬉しそうにやってきた。

「お世話になりまぁーす。」

キーボードのリュウが挨拶をした。

「遠いところをわざわざ…機材はスタジオがあるからそこへ運んで頂戴ね。好きな時に練習出来るわよ。」

あいつは満面の笑みを浮かべて俺たちを出迎えた。

「華さんもリツさんも待ちきれなくて、一日中そわそわしっぱなしだったのよ。」

…真啓に夏!!

玄関の騒ぎを聞きつけて、奥の部屋から夏と真啓が出てくるのが見えた。

「あっ。この男の子達は、わたしたちの家族ね。気にしないでね。」

春が笑いながら言った。

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