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第20章 奪われたキス

「ずっと前から…華のことが好きだ。」

手が震える。身がすくむ思いだ。
華が俯いた顔をあげた。大きな眼を見開いた。

「だって…この間…好きな人が居るって…。」

「華の事だよ。僕は華が好きなんだ。」

華の大きな眼から大粒の涙が零れた。それは頬を伝って、ぽたぽたと温まりだしたコンクリートの上に小さな染みを残した。

「あたしは…あたしはてっきり…。」

華は僕に抱き付いて来た。

「あたしも…真啓が好き。」

華の声が僕の心に響いた。早鐘の鼓動が、いきなりゆっくり静かに動き始めた気がした。
僕はどうしてももう一度その言葉を聞きたかった。

「華…お願い…もう一度言って?」

華は僕の胸の中でゆっくりと顔をあげた。緊張が解け、いつもの可愛い華の顔だった。

「あたし…真啓が好きなの。」

そこからは、時間がまるでスローモーションのように進んだ。僕は華の涙を指で拭った。小さな顔を両手でそっと挟んだ。僕は少し屈んで華の艶やかな唇を求めた。唇が重なり合う瞬間に華が静かに目を閉じた。
僕が待ち望んでいた瞬間だった。ほんの一瞬が、永遠のように長く感じた。華は恥ずかしそうに笑ったけれど、すぐに深刻な顔をした。

「あたし…真啓に話さなくっちゃいけないことがあるの。」

華は深刻な面持ちで僕に言った。

「昨日のここでの事ならユウヤさんに聞いたよ。」

華は驚いた顔をした。

「あの…。」

僕は華の言葉を遮った。

「昨日の事は、気にしない。今日は華が僕の事を好きだと言ってくれたから。」

長い間僕は華を抱きしめていた。

「う…ん。」

華の声は少し震えていた。

「明後日は今日よりもっと華を好きになっていると思うから。昨日の事なんて気にしないよ。」

そして僕達は再び唇を重ねた。最初のキスよりも少し長いその味は、苺のキャンディーの味がした。


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