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第22章 報告

俺が疲れて帰って来るとあの女が、エントランスで待っているのが見えた。黒田が先に気が付いて追い返した。

「Nextのミーナにも困ったものですね。事務所に伝えます。」

黒田はすぐにミーナの事務所にクレームの電話を掛けた。

「素人のストーカーの方がまだ扱いやすいよ。」

俺はため息をついた。

…疲れた。

部屋に戻ると、華からのラインを見ていた。真啓と付き合い始めた事が書かれていた。もうすぐライブだと言うのに、キーボードのリュウはなかなか練習に出てこなかった。久しぶりに出て来たリュウに、いつもは温和なマネージャーの黒田が叱った。

「リュウ。最近どうしたんだ?余り練習にも来ていないようだが。」

リュウは返事をしなかった。

「また女か?」

黒田は腕を組んでリュウをじっと見ていた。

「ああ。」

「他のメンバーの士気にも関わります。ライブも近いことだし、少し身を入れてお願いします。」

言葉丁寧だったが、口調は厳しかった。

「さぁ…時間がもったいないから練習はじめよぜ。」

メンバー調整役のトモキが黒田とリュウの間に入った。音合わせを繰り返すが、リュウが同じ場所で間違えてばかりいた。

「これじゃあ練習にならねーよ。」

流石の俺も苛立ちを隠せなかった。

「お前さ、プロだろ?もうちょっと真面目にやれよ。」

「サボってばっかのお前にだけは言われたくねーんだよ!」

リュウが俺の胸倉を掴んだので、リュウを思い切り突き飛ばした。

「触るんじゃねー!!お前の代わりなんて幾らでも居るんだよ!」

トオルとトモキが俺たちの間に入り止めた。

「もう今日は無理だ。止めよう?な?」

リュウはそれを聞くとさっさと鞄を持って出て行ってしまった。

「リュウにも困ったものですね。」

黒田が大きなため息をついた。

「俺たちの代わりは幾らでもいる…か。」

トモキがトオルと顔を見合わせながら呟いた。

「なんだよ?!」

…本当のことじゃねーか。

「3人で出来るところだけ練習しようよ?」

トオルがよいしょと言いながらソファから立ち上がった。



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