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第23章 幻想ポロネーズ

――― コンクール。

…これで決勝に残れれば、アジア大会へ行ける。

「大丈夫。いつもの練習を思い出してね。」

控室で、母が僕に静かに言った。そう言われれば言われる程緊張が増して、指の先が冷たくなるのを感じた。

…大丈夫。最初だけだ。僕なら出来る…僕なら…。

自分に言い聞かせるしかなかった。コンクールで地区大会で残った8名から4名に絞られる。控室には付き添いが一人だけ入れた。何人か知っている顔ぶれもいた。華から貰ったお守りをポケットの中で握りしめた。

…今頃華は学校で何をしているんだろうか?

「華さんからラブレターよ。控室で読んでねっ言ってたわ。」

真啓へと可愛らしい文字でピンク色の封筒に書かれていた。華は僕に内緒で母に手紙を渡してくれていたらしい。ちょっと嬉しいサプライズだ。

〈真啓へ 普段の風景を想像してね。〉

たったの2行だったが、その下には大きなグランドピアノを弾く僕と、ピアノの下で毛布に包まって寝ている華の姿が描かれていた。

「なぁにこれ?」

母が覗き込んで笑った。

「彼女、ピアノの下に潜り込んで聞くんだけど、すぐに寝てしまうんだよ。あんな音が煩いところでよく眠れるよ。」

僕はコンサートの時にすやすやと眠る華の顔を思い出して笑った。

「“あたしが下に居ると思って普段通りに弾いてね”って事だと思う。」

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