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第23章 幻想ポロネーズ

「ねぇこれからお祝いがあるの、華さんもぜひ一緒に行きましょう?ご両親には電話しますから。」

真啓のママは、あたしの肩をがっしりと抱いて興奮していた。関係者から祝福をひっきりなしに受けている真啓にはなかなか近づくことが出来なかった。

…真啓の努力が報われた日。

真啓は、とてもリラックスしてピアノをひとつの間違いも無く弾いていた。その顔に緊張は無く、微笑みさえ浮かべていて、他の演者を圧倒した。それはいつも楽しそうにあたしにピアノを弾いてくれている時の真啓の顔だった。

「あらあなたも来ていたのね。」

綺麗なドレスに身を包んだ美咲が声を掛けて来た。真っ黒な艶やかな髪が腰まであり、見るからにお嬢様だった。

「恩田さん。」

それに引き換えあたしときたら、可もなく不可もなしな個性も無いスーツ。

…もうちょっとおしゃれしてくるんだったな。

「伏見くん…凄かったわね。金賞なんて驚いちゃった。今日は父と一緒に来たの。これからパーティがあるって言うんだけれど、今泉さんも来るでしょう?」

「あ…うん。」

「良かった♪大人たちばかりで嫌だなぁって思っていたところだったの。父の生徒さん達も何人か来るけど知らない人達だから。」

美咲は、あたしに腕を絡めて来た。

…人懐っこい人なのかな。

学校では一度も話したことは無かったけど、美咲は可愛くて性格が良いと男子からも人気があった。

「来年の夏休みは一緒にウィーンへ短期留学するの♪わたしは声楽を学ぶんだけど、同じ学院になりそうで楽しみだわ。」

…えっ。高校を卒業して大学に入ってからじゃないんだ。

「恩田さんは高校卒業したらどうするの?」

「あたしは、音大で声楽を学んで、本格的に留学をしようかと思っているんだけど、まだ判らないわ。」

あたし達はロビーにゆっくり移動していた。

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