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第23章 幻想ポロネーズ

――― 決勝。

4人の中に残れただけでも僕は満足だった。

「あなた自身が楽しみながら弾きなさいね。」

そう言って母は、僕にまた手紙をくれた。

「真啓さんなら決勝まで絶対に残る筈だからって。」

…もしも僕が決勝に残れていなかったらどうしたんだろうか。

ふとそんな思いが過ったけど、こんなところも華らしい。

〈 真啓へ 決勝とあの夏の日の夜と、どちらが緊張したのかな?後で私に教えてね。〉

ころりと手紙から出てきたのは苺のキャンディーだった。僕は思わず声を出して笑った。控室にいる他の演者が僕を一斉に見たので慌ててすみませんと謝った。

「真啓さん?」

流石に笑った理由も手紙の内容も、母には言えない。

「何でもないですお母様。」

僕が真面目な顔を作って答えると、母は、それ以上は何も聞かなかった。

…君はその答えを僕から聞かなくても知ってる筈だよ。

包みを開け、小さな苺のキャンディーを口の中に放り込んだ。甘く優しい香りが鼻をくすぐった。大勢のスタッフが見守る中、僕はゆっくりと最後のステージへ向かった。

…暗がりの客席の中のどこかに華がいる。

僕は、気持ちを言葉に出すのも、汲むことも上手く無いけど、君も僕の事が好きだと言ってくれた時、僕がどんなに嬉しかったか、僕が表現できる方法で伝えたい。





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