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第25章 傷ついた心

「おい。真啓。話があるんだ。」

俺は音楽室で、恩田とイチャコラしている真啓を呼び出した。

「空くんどうしたの?」

…とぼけやがって。

「ふたりで話がしたい。ちょっと来い。」

俺は誰も居ない渡り廊下に真啓とふたりでやって来た。

「お前、恩田と婚約したってのは本当か?」

…あの日…泣いていたあの日。このことを真啓からでは無く、他人の口から告げられたんだ。

裏切られても、何も言わず必死に堪えている華をみていると、むかむかと腹の底から真啓に腹が立った。

「えっ…?」

真啓はびっくりした顔をしていた。

「とぼけるなよっ!恩田と短期留学するんだろ?」

「うん…それは…。」

――― ビシッ。

俺は真啓を思いっきり殴った。真啓はふらついたが、なんとかその場に踏みとどまった。

「ちょ…空くんっ。一体何のことだい?僕は…」

口の端が切れ、真啓はそれを手で拭った。

「煩いっ。俺はお前なら華を大切にすると思ったから何も言わなかったんだ。」

自分がなんでこんなにイライラしているのか判らなかった。

「僕は、華ちゃんに一方的に振られたんだよ?」

「それはお前と恩田が婚約するって聞いたからだろっ?華は自分から身を引いたんだよ。」

「えっ…。ちょっと待ってよ。」

…今更良い訳か。

「ユウヤとして俺は、華をずっと見守って来た。お前と華がそれで幸せなら良いと思ってた…だけど、これからはお前に遠慮しねーぜ。俺は、華が好きだ。」

…そうだ。俺は華が好きだ。

「空…くん。」

「お前は真面目で良いヤツだと思っていたのに、裏じゃ二股かよ最低だ。見損なったよ。」

「そんな…でたらめ…誰が言ってたの?」

「いっつもお前にくっついて回ってる女に聞いてみたらどうだ?」

「恩田さんに?」

俺はそれには返事をしなかった。

「お前は華を傷つけた。俺が、ユウヤとしてこれからは華を守る。悲しい思いはあいつにはさせない。じゃぁな。」

その場に立ち尽くしている真啓を残し、俺は足早に教室へと戻った。

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