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第29章 あたしの知らないみんな

「当たり前じゃん。知られたらこうなるから面倒臭いと思ってたんだもん。」

「好きなのっ?それともただの…そういう関係なだけ?」

夏はカーペットの上に座ってスマホをいじっていた。

「好きに決まってるじゃん…言わせんな。」

夏が俯いて激しく照れているのが判った。それを見てあたしはホッとした。

「じゃぁちゃんと好きって言って付き合ってあげなよ。こんな、なんとなぁくじゃなくて。それにパパ達にもちゃんと相談し…。」

あたしが話し終わる前に夏が言った。

「ああ待って。それはマジで勘弁。親に知られるのは嫌だ余計面倒臭くなりそうだもん。」

夏はあたしの顔をちらりと見た。

「何よそれ…人のことは茶化してばっかりでさ。」

「だって華わかり易くて面白いんだもん。てか…華はまだ処女でしょ?」

あたしは一瞬で顔が赤くなるのが判った。

「ほらね?」

夏はまた意地悪な笑みを浮かべながら言った。

「人の事心配している余裕があるなら自分のこともっと心配したら?」

ほらこれ見てと言って夏があたしに見せたネットニュース。

<ユウヤとNEXTミーナお泊りデート?>

「ミーナってビッチだってプロトのリュウさんが言ってたけどさ、大丈夫なの?」

「そんなの大丈夫だし、ユウヤのゴシップなんていつものことでしょ?仕事の宣伝の様なものだよ。」

「お願いだからリツを大切にして?悲しませないでね。あたしにはとっても大切な友達なの。もしも傷つけるようなことがあったら、あたし許さないからね。」

「煩いな。」

「煩いって何よ?パパみたいに浮気とかしたら許さないからね。」

「何だよ。あの人と一緒にするなよ。」

「それでなくてもモテモテ3人衆の一人なんだから。」

「何だよそれ。」

空と真啓、そして夏は女子に人気の3人組だった。あたしは夏が、他校の生徒にも何度も告白されるのを見ているし、あたしが夏の彼女と間違われることもよくあることだ。

「兎に角、リツとちゃんと付き合ってあげてね。」

「華には関係ないだろ?」

「いい?リツに酷いコトしたら、それこそサト先生のことパパ達にばらすからね。」

「華の癖に脅しか…ま…別に良いけど。華こそ浮気されないようにせいぜい頑張れ。」

夏はスマホを見ながら笑って言った。

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