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第32章 満月の夜

――― 誕生日。

おじいちゃんと一緒にお祝いするのはどれくらいぶりだろう。夕方少し早い時間に、クルーザーでのパーティ。春さんの美味しい料理が並ぶ。

「ふたりともお誕生日おめでとう。」

おじいちゃんからのプレゼントは、あたしがずっと欲しいと言っていたブランドのバッグだった。

「ありがとう~♪」

リツはコスメセット、そして空ことユウヤは、お揃いのブレスレットだった。あたしは皆にお礼を言った。あたしはリツから貰ったコスメグッズでお互いに化粧をしあった。お腹がいっぱいになって、春さんも含めそれぞれがゆったりと過ごしていた。

「春さんとおじいちゃん…仲が良いんだね。」

ムードのある曲が流れ、ふたりが静かにダンスを踊っているのを眺めて空が言った。

「うん。おじいちゃんは若いころから殆ど仕事で家に居なかったから…二人の時は、もう恥ずかしくなるぐらいくっついて歩くの。」

春さんはおじいちゃんの前では、恋をしている少女のように可愛かった。

「華は初めてのダンスを踊った時のこと覚えてる?」
空は、つけてくれたブレスレットを指で触りながら聞いた。

「うん。覚えてるよ…とっても綺麗な男の子だった。名前聞いたのに忘れちゃった。」

あたしはその時のことを思い出していた。

「でも…その子…あとでママにプロポーズしてたの。おませさんだったわ。」

それでも周りの大人は微笑ましく眺めていたのを覚えている。

「それ…俺…。」

空は笑いながら言った。

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