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第32章 満月の夜

「空?何かあったの?」

あたしはブランケットで前を隠しながら起き上った。

「ああ…。今は言えないけど、すぐに東京に戻らなくっちゃいけなくなった。」

ベッドサイドに座っている空の大きな背中が丸まっていた。そして暫くそのまま動かずに考え込んでいた。

「春さんを起こしてくるわ。」

あたしが着替えて、春さんを呼びに行こうとすると、空があたしをぐいっと引っ張って抱きしめた。

「華…ホントにごめんな?誕生日おめでとう。」

空は今にも泣きだしそうな顔をしていた。

「空…。気にしないで?仕事なら仕方が無いもの。忙しいのに来てくれて本当にありがとう。」

あたしが、春さんを起こしに行こうとすると、春さんが寝室から出て来た。

「春さん…丁度良かった。」

「空くんでしょ?今黒田さんからあたしの所にも電話があったの。あなたはもう遅いから寝てなさい。」

春さんはバタバタと空の寝室へと向かった。既に空は洋服に着替えていて荷物を纏め始めていた。

「送って行くわ。」

「いいえ。タクシーで帰ります。」

空は携帯で検索を掛けてタクシーをすぐに呼んだ。春さんはバタバタと台所に戻り、包みを持ってきた。

「これ残り物だけど、お弁当。夜中でもお腹が空くでしょ?」

空はその素早さに笑った。

「春さん本当にありがとうございます。」

バッグの中に包みを入れた。

「華も玄関まで送ってあげなさい。」

「うん。」

「理由は今は言えないんですけれど、明日になれば判ると思います。華。また必ず連絡するから。」

タクシーが玄関に止まるのが見えた。

「お世話になりました。突然で済みません。」

春さんに空は謝ると、あたしをま強く抱きしめた。

「続きはまたね…。」

小さな声であたしに囁き、玄関を足早に出て行った。空はタクシーへ乗り込んだ。あたしと春さんはタクシーが見えなくなるまで見送っていた。

「さあもう遅いから寝ましょう。」

春さんは寝室へと戻った。あたしは、さっきまで空が使っていた部屋へ行った。空の残り香がするベッドに潜り込んで目を閉じた。



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