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第33章 助っ人

「キーボードのリュウが車に女を乗せてて事故った?」

俺が病院へ行くと、黒田が待合室で待っていた。他のメンバーも集まって来た。

「手術をしたんだけど、まだ意識が回復して無い。この先も戻るかどうか分からないんだそうだ。」

黒田が待合室の椅子に座り、ため息をついた。

「で…?女は大丈夫だったのか?」

俺は黒田の隣に腰かけた。

「ああかすり傷だったそうだ。NEXTのミーナだ。写真までしっかり撮られてる。」

今週発売の週刊誌にこのニュースが出ることを黒田は心配していた。アルバムの発売日と重なりそうだった。

「はぁ~?」

この間もミ―ナの強姦疑いで事務所同士で話し合いになったばかりだというのに。

「ミーナにも困ったもんだ。手あたり次第…だ。」

その時にも、自分が被害者顔して女優真っ青の演技を見せた。向こうの社長は、弁護士を雇って訴えるだの息巻いていたが、華の動画でこちらの方が優位に立てた。

「他のメンバーは?」

俺たちは話しながら、リュウの病室へと向かう。

「みんな様子を見に来て、帰ったよ。」

「そうか…。黒田さんは忘れて無いと思うけど」

そこには沢山の機械に繋がれたリュウが横たわっていた。

「…なんだよ。こんな時に…。」

俺は結成当時から約束だった事をあたらめて黒田に告げた。

「俺、約束通り3月で、プロトを辞める。」

「ああ判ってるよ。」

黒田と俺はタクシーで家へと戻った。


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