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第33章 助っ人

待っていた黒田に紹介した。

「あっと…同窓生の真啓。ピアノのコンクールを総なめにする期待のピアニストだ。」

「初めまして。」

真啓は黒田に礼儀正しく頭をさげた。

「ああ…リュウから噂を聞いていたよ。コンクールで優勝してるのに、医学部目指してるって。そっか同窓生だったんだね。」

黒田はどうやらリュウから話を聞いていたらしい。

「入れるかどうか分かりませんけれど。」

真啓は恥ずかしそうに笑った。

「じゃぁ早速なんだけど…。」

俺はスタジオへ真啓を連れて行った。Rinとは初めてだったので紹介したけれど、メンバーとは夏の合宿で既にあっていたのでスムーズだった。

「真啓くん久しぶり!ユウヤにとうとうボランティアで呼び出されたか。」

トモキが笑った。

「助かるよ…なかなか助っ人が見つからなくって。」

トオルが人数分のコピーをメンバーに配っていた。

「Rinがボーカルで、俺ギター弾くよ。真啓もスタンバイお願い。」

真啓は、譜面を受け取るとピアノの前に座った。
2時間ほどの練習。みんなはプロだから当たり前だけど、真啓は物怖じもせずきちんと合わせてくれる。
練習後は皆で焼肉屋へ行った。

「華ちゃんとは最近どう?」

皆がそれぞれ話をしている時に、真啓が声を掛けて来た。

「あんまり最近は会えてないかな。夏のお父さんが厳しいらしくて…。」

受験も近いし、真啓だって本当は勉強をしなくちゃいけないのに俺に付き合わせている。

「そうなの?僕は、華のお父さんよりも夏のお父さんの方が話しやすいけどな。」

真啓が上カルビを編みの上に置きながら言った。

「なんかね…娘大切にしてますってオーラが凄くって…。」

俺は傍に野菜を並べながら言った。

「ははは…言いたいこと…何となく判る気がするよ。」
夏の父親攻略は、真啓から情報を仕入れた方が良さそうだ。Rinが真啓に話しかけたので、途中で会話が終わってしまった。

…まだ華のことが好きなんだろうか。

穏やかな表情でRinと話をしている真啓の横顔を俺は静かに眺めていた。

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