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第5章 涙雨

「リストのハンガリー狂詩曲だね。」

Valentin● Lisits●という女性ピアニストが好きで、あたしはその人が弾いた曲だったらわかるけど、名前が覚えられない。

「うん。中盤でピアノの上で手が爆ぜるのを見てるのが好きなの。」

あたしがそういうと真啓は決まって笑う。
音楽室の奥から空が出て来た。

…うわ…嫌な奴にあっちゃった。

「古水流くんってギター弾くの?」

真啓が声を掛けた。

「うん…ちょっとね。それよりお前、楽譜みたらすぐ弾けるの?」

空は珍しく真面目をしていた。

「曲にもよるけど…ジャズとかは苦手かな。リズムとか難しいから。」

「今度持って来るから弾いて欲しいんだ。」

「うん。良いよ。」

真啓が優しく空に笑った。

「あ…お前の名前聞いて無いや…。」

空がぶっきらぼうに言った。

「僕は 伏見真啓。まひろで良いよ。」

「判った…じゃあな。真啓。」

空は音楽室を出て行った。

「ねぇ…もしかして、真啓くんのピアノ聞いてたんじゃ無いの?」

あたしは空が出て行くのを見届けてから、真啓に言った。何故かそんな気がした。

「そうだったの?彼はいつも居るけど、ギターの手入れをしているんだと思ってた。そうだとしたら、ちょっと恥ずかしいな。」

真啓は、恥ずかしそうな顔をしながらも爽やかな笑顔を見せた。

「そうだ。真啓くんのお母さんのコンサートの後、もし良かったら一緒に外でご飯食べない?」

あたしは、楽しみで仕方が無かった。

「ホント?!うん。」

真啓が嬉しそうに笑ったので、あたしも嬉しくなった。
「これ あたしの携帯とメアド。夏に聞けば判ると思ったけど、あたしのも一応渡しておくね。」

あたしはメモに書いたアドレスを渡した。

「ありがとう。後でメールで送るよ。」

真啓はすぐに胸の内ポケットの中に大切そうにしまった。

…あれ…でも真啓から貰ったメアドにあたしが送れば良かったんだ。まっいっか。

あたしは昼休みが終わるまでじっと真啓のピアノを聞いていた。

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