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第7章 空の秘密

空は、華の家を出ると、どんどんと歩き、黒田がその後を追いかけた。ふたりはエレベーターに乗り込んだ。

「私が“おじさん”ねぇ。」

空は何も答えない。

「…あの子の家に行くために、仕事をドタキャン?」

「うっせーよ。」

「コンサートで怪我をしてた子?」

エレベーターは、小さな振動をしながら1階へと降りて行った。

「珍しくファンレターに返事を書いたりして…。」

黒田はひとりでしゃべり続けた。

「…。」

「ファンの子に手を出してはいけませんよ。」

「ちげーよ…同じクラスの子だよ。」

空は先ほどとは違って一気に不機嫌になった。

「ファンでもあなたの事が判らないなんて…。」

黒田がクスクスと笑った。

「それにしても…とっても可愛い子でしたね。私はお母さんの方が好み♪」

黒田は、話続けた。

「うるせー。年増好き…少し黙れ。」

エレベーターを出ると、黒塗りの車が止まっていて、黒田がドアを開けるのを待たず、空は自分で開けて後部座席に乗り込んだ。

「あなたに友達がいるなんてねぇ…。」

黒田がくっくっくっと笑って運転席に座った。

―――ドカッ。

空が運転席を蹴った。

「早く出せよ…。」

不機嫌な振りをしていても、空の口元に笑みが零れているのを、黒田はバックミラーで確認し、車を発進させた。

「明日は朝から予定がびっしりですから、覚悟してね。」

空は淡いスモークが張られた窓から、冷たい月を眺めていた。

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