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第8章 コンサート・デート

―――― 期末テストを控えた2月。

今日は真啓のママのコンサートの日だ。あたしは真啓と夕方の駅前で待ち合わせをした。あたしは約束の時間の10分前に着いたけど、真啓が既に待っていた。あたしを見つけるとニコニコ笑いながら、控えめに手を振った。

…真啓らしい。

「真啓くん…お待たせ。寒いのに待たせてゴメンね。」

あたしは、厚手のコートですっかり着ぶくれしていた。帰宅途中の会社員やサラリーマンで駅前はとても込んでいた。

「やっぱりこの時間は電車も混んでるだろうなぁ。」

あたしは人ごみの中を歩くのが苦手だった。一緒に歩いていた筈の人をすぐに見失ってしまう。

「そうだね。でも帰りはラッシュも終わっていると思うよ。」

真啓は、真っ白な息を吐きながら静かに笑った。駅の中は、色々な方向へ歩く人が居て、あたしはその波に飲まれ真啓を見失いそうになった。

「華ちゃんこっちだよ。」

真啓の声が斜め横から聞こえた。しかもあたしは不可逆、器質性の方向音痴ときている。

「あ…そっちか。」

あたしは慌てて真啓の隣に並んだ。

「やっぱりタクシーで行く?」

真啓が心配そうに聞いた。

「ううん。大丈夫。」

駅の改札に向かう程、人混みが激しくなってきた。あたしは慌てて、真啓のコートの袖を掴んだ。

「真啓君…ごめんね。掴んでないと見失いそうだから。」

「大丈夫だよ。乗り場はあっちだ。」

人に押されて真啓の袖を離しそうになった時、真啓が冷たい大きな手であたしの手をしっかりと握った。ぐいぐいと人に押されながら歩き、やっとホームまでたどり着けた。

「次の電車に乗れれば、かなり時間に余裕が出来るから、ジュースを飲んだり、母の控室へ行く時間もあるよ。」

真啓は立ち止まると、あたしの手をそっと離した。

「あ…真啓くん。悪いんだけど、ずっと手を繋いで貰ってても良い?あたし見失っちゃうの得意だから。」

真啓は笑って頷くと再びその大きな手であたしの手を包み込んだ。電車が来たが混んでいた。ぎゅうぎゅうと押しつぶされそうになって真啓と向き合う形でぴったりとくっついてしまった。

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