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楔 ---KUSABI---

第1章 壱・白羽の矢

洞窟の中は、一本道ではなかった。
分かれ道があっても、何故か選ぶ道が解るので、
迷うことなく歩く。
すると、上から下へと大量の水が落ちる音がするし、
洞窟の行先に光が見えた。
音と光のある方向にどんどん進むと・・・。

「わぁ・・・・・・」

光の正体は無数の蝋燭。
風はないはずなのに、時々炎が揺らめく。

一番奥、突き当りには、木製の古い祠らしきもの。
そして、祠を守るように手前にはかなり広い範囲で、
地下水が溜まっていて、左右壁沿いは両腕をいっぱいに
延ばしたぐらいの長さ滝が2つ。

ただ、これ以上は進めない。
祠に辿り着こうとしても、溜まっている地下水が邪魔しているから・・・。

しゃがみ、水面をのぞき込む。
浅くはないらしく、底が見えない。

と。
水面に人が写った。
私の後ろに人がいる。

「何時の間に・・・」

慌てて振り返る。
気配を消して、歩く音も消して、気が付けば
着物を少し着崩した男が何時の間にか目の前に立っている。

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