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楔 ---KUSABI---

第1章 壱・白羽の矢

顔は解らない。狐の面をつけているからだ。
半面なので、顔下半分の口元は露だったけれど、
表情は解らない。

『男の匂いがついている』

聞き覚えのある声。
・・・さっき、聞こえてきた神の・・・声?
その前に、男・・・とは?

右手を持ち、引っ張られるように立たされる。
目の前の人物?は背が高い。

『たまには趣向を変えてみよう』

口角が少し上がった。笑んだ・・・らしい雰囲気。

右手を持ったまま、手を引かれ、歩くのは良いのだけど、
狐の面をかぶった男は、水のある方向に向かっている。
数歩歩けば、規模は小さいものの、湖化している水たまりの
中に足をつけることになる、から、

「ちょ、ちょっと待って」
『濡れないから心配はいらない』

・・・否、濡れるでしょ、普通は!!
ってテンパったのは一瞬で。

「あ、あれ?」

強引に引っ張られたので、ぴしゃぬれになるのを覚悟したけど、
何故か、水の上に立っている状態。

『手を離したら、濡れる』

・・・そういう論理らしい。もう考えるのは放棄しよう。

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