楔 ---KUSABI---
第2章 弐・違う世界
『本格的に引きずり込むとしよう。見ているだけでは、楽しめまい?』
そういう男の視線は、襖など意味をなさない状態で、間違いなくこちらを見ていた。命じる事に慣れている鋭い視線が、私を射抜く。
「ヒッ」
短く小さい悲鳴とともに、数歩後ろに下がる。
「あら、起きていたのね。なら、混ざりましょうよ」
女の声とともに、女がサッと襖を開ける。更に数歩下がったが女の行動が早く、手首をキュッと捕まれる。
「貴方は逃げられないの。大丈夫。逃げたいと思うのは最初だけ。段々その気持ちは薄れて、最後に残るのは目の前のあの人だけになる。
飢えもせず、眠りもせず、ただひたすらにキモチイイ。それだけの世界よ。それだけで、貴方はここにいる意味がある。残された人たちも、神のご加護が得られる」
「神のご加護?」
「あら、話過ぎた。ごめんなさい。些末な事だったわ。忘れてくれても構わない」
浮かぶ笑みに優し気。なのに、この状態は異常。
逃げたい気持ちはあるけれど、足が済んでしまって動かない。相手の女が私の手首を持っているけれど、それだけなら普通、簡単に逃げられるのに。
「私は何をしたらいいかしら?」
『わたしを楽しませよ。見世物として』
「貴方の意のままに」
そういうと、目の前の女は口づけてきた。
「ンッ」
「逃がさないわ。貴方も私と一緒に、踊りましょう?」
再び笑み。・・・けれど今回の笑みには毒が含まれているように感じた。
そういう男の視線は、襖など意味をなさない状態で、間違いなくこちらを見ていた。命じる事に慣れている鋭い視線が、私を射抜く。
「ヒッ」
短く小さい悲鳴とともに、数歩後ろに下がる。
「あら、起きていたのね。なら、混ざりましょうよ」
女の声とともに、女がサッと襖を開ける。更に数歩下がったが女の行動が早く、手首をキュッと捕まれる。
「貴方は逃げられないの。大丈夫。逃げたいと思うのは最初だけ。段々その気持ちは薄れて、最後に残るのは目の前のあの人だけになる。
飢えもせず、眠りもせず、ただひたすらにキモチイイ。それだけの世界よ。それだけで、貴方はここにいる意味がある。残された人たちも、神のご加護が得られる」
「神のご加護?」
「あら、話過ぎた。ごめんなさい。些末な事だったわ。忘れてくれても構わない」
浮かぶ笑みに優し気。なのに、この状態は異常。
逃げたい気持ちはあるけれど、足が済んでしまって動かない。相手の女が私の手首を持っているけれど、それだけなら普通、簡単に逃げられるのに。
「私は何をしたらいいかしら?」
『わたしを楽しませよ。見世物として』
「貴方の意のままに」
そういうと、目の前の女は口づけてきた。
「ンッ」
「逃がさないわ。貴方も私と一緒に、踊りましょう?」
再び笑み。・・・けれど今回の笑みには毒が含まれているように感じた。