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楔 ---KUSABI---

第2章 弐・違う世界

「嫌ッ」

女の人に口づけられた!という衝撃を、正確に脳内が自覚すると固まっていた身体が動いた。
ドンっと女の人を押し、押したことで女の手が手首から離れる。そのまま空いている庭の方向に逃げようと数歩歩いたのだけど・・・。

部屋から出る手前で、音もたてずに和紙が張られた格子状の襖が勝手に閉まった。

「ヒッ」

驚愕とともに、軽く悲鳴。でも庭に出られないなら部屋の襖を開ければ逃げられる・・・筈だったのに。

「開かないッ」

引けば動く筈の襖は一切動かない。

「開いてぇッ」

『これで、獲物は籠の鳥』

気が付けば自分が最初に寝かされていた畳の部屋に、3人。私と女と、親玉の男と。ぐるりと取り囲まれて、逃げ場がない・・・。隣の部屋にすら行けない状況。

「嫌よ、嫌々・・・」

一つでも開く襖がないかと、次々襖に手をかけ引く、押すを繰り返す・・・けれど、それは無駄な労力でしかなかった。

「主さま、あの子の毒気を抜き過ぎではないですか?」

『正気から堕落するところが見たい。かつてのお前と同じように』

「相変わらず鬼畜ですのね」

女は笑っていた。かつてのお前と同じ、とは彼女も?と目線を向ける。

「ならば、あの子も私と同じように、快楽の海に落として、貴方の精を乞い続ける淫乱な女になりましょう、ね?」

最後の、ね?は私に向かって。

「い、嫌!」

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