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修練の鏡と精霊の大地

第20章 ラスボス

「じゃ、精霊ってのは、闇の妖精の魂が精霊の大地の冥界で生まれ変わるんじゃないんだ」と球也が、今度は心で思うのではなく、口で言った。


「そうです。光の魂も精霊になります。ここにいる、樹木の精霊は、光の者ですよ」とオウバー・サンは、ソーヤを赤ん坊のように抱いた。


「そうなんや……でも、力を使いきったんか、動かなくなった」


 球也は心配そうにソーヤの顔を覗いた。塔の中で巨木を育てた時も、このように倒れたのを見ているからだ。


 ヌカーはハァ〜とため息を吐くと、オウバー・サンが抱くソーヤを指差した。


「そいつはもう寿命だ。死んでいる」


「ええっ!!」 


 一斉に驚きの声と嘆き声が響いた。


 全員、オウバー・サンの周りを囲むようにあつまった。


 さっきまで緑色だったソーヤの体が、薄く茶色がかかってきた。


「マジか、ソーヤ……ソーヤっ!!」


 コウヤは、ソーヤの体をゆすり、声をかけるが、返事どころかピクリとも動かない。


 だが、ソーヤの顔は笑っていた。悔いは無いと言わんばかりに……。


「一番、頑張ったよね……この子がいなかったら、私達が再び集まることはなかったよ」


 莉子の目からうっすらと涙が光って見えた。


 球也は、永眠するソーヤの手を軽く握った。


「精霊の大地で、ソーヤは寿命が近いと聞いてた……僕はずっと一緒やった。ソーヤがおらへんかったら、ここまでできなかった。神の精霊を呼んでくれたのもソーヤやった。ありがとうだけじゃ、言葉が足りないよ……」


 今まで泣かなかった球也が、泣き崩れた。小さくても最大の恩人、ソーヤに何度も助けられた。


 これほど、胸が熱くなるほどの悲しみは初めてだった。


 球也の脳裏に、忘れもしない、出会ったころに初めてかわした会話が過った。


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