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Perfect Romance

第3章 ここから始めよう



「二宮~行くぞ!」
フロアに響く櫻井さんの声

「あ…はい!」
慌てて資料の入った封筒を持ち、先を歩き始める彼を小走りで追う

研修期間が終わっても、俺は継続して櫻井さんと組んで仕事をしていた

それと言うのも、二人で組んで回った時に、何故か今までなかなか契約に至らなかった2件が、立て続けに取れてしまったから

部長命令だから、逆らえるはずもなくて

でも、櫻井さんがそれを聞かされた時に
すごくあっさりと頷いていたのが俺にはとても不思議だった



……………………


「では、ぜひご検討の程、よろしくお願いします」
応接室のソファーから立ち上がり、櫻井さんが頭を下げる

「お願いします」
俺もそれに従って深くお辞儀した

「前向きに考えますよ。なかなか良い話です」

目の前のタヌキ親父…じゃなく、担当者は何とも言えない目付きで俺達を見ながら握手を求めてきた

櫻井さんが営業スマイルでそれに応じる

嫌だけど断れるはずもなく、俺もそいつと握手を交わした

握った手の親指が、俺の手を撫でる
ゾワッと鳥肌が立ったけど

…そこは我慢するしかなかった


「では、失礼いたします」
営業スマイルを貼り付けたまま、櫻井さんは俺を先に出してから自分も応接室を後にした


下りのエレベーターの中

「契約はほぼ決まりだな」
櫻井さんが自信に満ちた顔をする

その顔は、男から見ても惚れ惚れするくらいに格好良い

「いけそうですか」

「あいつ、お前を気に入ってるから」

「へ?」

「あのジジィ、スケベな目でお前見てたぞ」
櫻井さんが面白そうに笑う

「いや、勘弁してください、マジで」

「お前、男にモテるな」

「えええええっ!」

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