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Perfect Romance

第1章 はじまりの唄


これだけの時間
車は1台も通ることはなかった

その場所で轢かれかけた俺はやっぱり最悪の日だ

エンジンを掛けて、車が静かに走り出す

「会社、藤島商事でいいんだよね?送るから」
当たり前のように発せられる言葉

「えっ…何で会社を…」
知ってるんですか?と言おうとしたら

「ああ、その社章でね、分かった」

スーツに付けている社章のピンバッジ
こんな小さいもの、良く見たな…

「君の会社、うちの取引先でもあるし、そこに友達もいるんだよね」

「ほ…本当ですか?!」

「んふ。嘘ついても意味ないでしょ」

どことなく楽しそうな顔

「もうひとつ。君は営業二課の…二宮くん、かな」
「な…ななな何で!!」

「やっぱり!」
彼が盛大に笑いだした

何が何だか分からない俺は口をパクパクと
金魚みたいにするしかできなかった

「鬼の教育係」
「ほぇっ?…さ…櫻井さん?」

まさか…


「そう。友達」

ガーン!と殴られたようなショックが襲う

「いやさ、昨日翔ちゃん…あ、櫻井の事ね?
から聞いてたの」

「何をですか…」

「今年の新人はやりがいがあるって。で、今日俺のとこにこいつと行くからって写真見せて貰ってた」

うちの会社は、セキュリティの関係で
初めて行く取引先には例え同行者がいても顔写真を前以て送る事が義務化されている

「遅刻する事だけ、会社には連絡入れてね。
着いたら俺がうまく言ってあげるから」

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