
Perfect Romance
第1章 はじまりの唄
帰りは直帰するから、と櫻井さんの車で出掛けた
訪問予定は2時。
なのに、11時には会社を出発していた
「さっき、智からメールがあった」
「大野さんですか」
「昼飯、一緒に食べようって。あっちも異動してきた奴が智の下に付いたらしい」
何でも、面白い奴だからぜひ先に紹介したい、と言ってたようで
櫻井さんは運転しながら、チラッと俺を見て
「…もう、今日は仕事にならないな」
と苦笑した
「へへ…俺、ちょっとラッキーですね」
今日だけだぞ、と言う櫻井さんもどこか楽しそう
朝の不運は記憶の片隅に消えていった
鬼の教育係が、優しい
それだけでも俺にとっては充分だった
だって多分、櫻井さんのこんな顔
見たことある社員なんていないんじゃない?
それをわずか4日で拝めるなんて
ラッキーだと思う
散々研修前に、先に櫻井さんの同行研修をした新人仲間に
"あんなに怖い人初めてだ "
"ガチで逃げたくなる"
なんて脅されてたんだから
