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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


「……いらない」


口をとがらせ、仏頂面で顔を背けるにの。


「え……そお?」


俺は、にのの口元までもっていった指の行方に困り、その指をもう一度自分で舐めた。


醤油がちょっときついから、濃いめの味付けになったけど、絶対おいしーのにな……。


と、考えかけ、にのの赤く染まった頬を見て、唐突に思い出した。



『あいばさん……はぁっ……ああ』



そして、同時に脳内再生しだしたにのの声。
風呂場のむせかえるような熱気のなか、ひとり自分を慰めて、俺の名を呼んでいた、あのかすれた声。



『まーくんっ……!』



イクときは、まーくん呼びって、けっこう刺さったよな。


……って……にの、もしかして…このこと言ってんのかな?


俺はスプーンをおき、顔をそらしてるにのの細い肩に、ゆっくり手をおいた。

瞬間、ぴくりと大きく体をふるわせ、その場から逃げようとする体をすかさず抱きこんだ。


「……なに……?相葉さん、お肉焦げちゃう」


慌てたにのの指摘に、後ろ手にガスを消して、俺はぎゅうっとにのを抱き閉めた。
にのは慌てたように体をよじるけど、そんな力、俺には無いに等しい。


「……うん、覚えてる。思い出した。にのが色っぽかったこと」


「………………忘れて」


俺に抱き締められたまま小さく呟くにのが、可愛い。
まあ、ひとりエッチを俺にみられてるなんて思ってもなかったろうしな。
気まずい気持ちも分かるけど…。


「なんで?俺は嬉しかったよ?」

「……嬉しいって……なにが」

「俺を思ってシテくれたってことでしょ」

「…………」

「……にの」

「…………忘れてってば」

「やーだ」


くふふっと笑って、にのをぎゅうっと抱き締める手に力をこめた。

細いけど丸いお腹。適度な弾力が温もりが、全てがいとおしい。

…………ああ……だめだ。
夕飯食べてゆっくり愛しあうつもりだったけど、我慢できなくなってきた。


俺は体を少し離して、にのを見つめた。


気まずそうに尖った唇に笑いをこらえながら、それを……俺のでゆっくり塞いだ。


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