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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


今にも泣きそうな顔で激昂するにの。
こんだけ怒った顔を見るのは久しぶりだ。


てか、違う!違う!


慌てて、その興奮して熱い体をしっかり抱きこんだ。


「ごめん……そーいう意味じゃないよ」


ぎゅっと頭を抱きこむようにして、その柔らかな髪の毛を撫でた。

落ち着いて、というように何度も撫でていると、にのは俺の肩口に額をおしあてて、黙って下からぎゅうっとすがりついてきた。


俺だと思っていた相手が俺じゃなくて。
ただの犬だと思っていたのが、俺で。


にのも金髪にふりまわされた事に変わりはない。
きっと、俺の前でしかしない顔や、言わない事をあいつの前でしてしまったことが、許せないのだろう、と思った。


「嫌なんだ……例え知らなかったにしても、相葉さん以外の人とキスしてたなんて。自分を殴りたいくらい嫌だ」

「うん。そうだね……」


にのの絞り出すような声に、俺は優しく応えて、頭を撫で続けた。
しょうがなかったとか、誰も悪くない、とか安っぽいなぐさめはいらない気がした。


熱い体を抱き締めて。
言葉の代わりに俺の存在を感じてもらえるように、ぎゅうっと抱き締め返した。



「にのちゃん……大丈夫。ここにいるの俺だかんね……」

「………」

「もう離れないからね」

「………」



こっくり頷く仕草を確認して、頭にキスした。


それにしても………。


つくづく、今回の事には怒りしかわいてこない。
あの緑のやつマジで許さねぇ。

嵐がうらやましかった、なんて、それっぽい殊勝な理由つけてたけど、それによってこんなに辛い思いを被るやつがいることなんか、考えもしなかったんだろうな。


絶対今度あったらぶっ飛ばしてやる…!


俺は物騒なことを考えつつ。
体を離してにのの鼻先にチュッとキスをした。


てっきり泣いてるかと思ったその顔は、潤み気味の目をしてるだけで、仔犬パーセンテージはいつもより五割増し。

その頼りなさが、可愛くて、もう一度チュッとキスしたら、にのは照れくさそうにふふっと微笑んだ。

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