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キラキラ

第32章 バースト 8


いーよな、二人は。
俺、寂しいじゃん……。


「お邪魔だった?」


ちょっと皮肉をこめてからかってみたら、かずが、ふるふると首を振った。
そして、雅紀をじろりとみる。

大方、テレパスで、バカとか言ってんだろうな。


それをうけてか、雅紀は悪びれる様子もなく、てへへっと笑ってる。


さらには、


「別に見られたって、潤なんだからいーじゃん」


と、テレパス無視で無邪気に口に出して言っちゃってる雅紀に


「いいわけないだろ、バカ!」


と、思わず、かずが言い返した。


その悪態のつきかたが、いつも大野家にいる物静かなかずの姿からは意外で、それが新鮮にみえ、俺は笑ってしまった。

きっと、かずは、雅紀と二人きりの時は、こんなに素直に感情をだしてるんだろうな。

大野家では、やっぱりどこか遠慮してるとこもあるだろうから。


俺は、ローテーブルにトレーをそっとおいた。


すると、すかさず、


「あ、翔さんが朝から焼いてたやつ。いい匂いしてたんだよね」


かずが、嬉しそうに呟いた。


「すげー。あの人なんでもできんだね」


雅紀が、心底感心するように言った。


不思議。
自分の恋人をほめられるのって、どうしてこんなに嬉しいんだろう。


俺はくすぐったい思いで、それぞれに皿を配り、ゆっくりとケーキにフォークをいれた。




今、翔は、塾と家庭教師でとにかく忙しい。

塾の講師なんて柄じゃない、と最初から断り続けていたらしいけど、夏期講習だけ手伝ってくれ、と、知り合いに泣きつかれて、OKせざるをえなかったとか言ってた。

ちょっと寂しい顔になった俺に、金をためとくから、一緒に旅行に行こうな、と優しく言ってくれた翔。

そんなん言われたら、頑張ってね、としか言えない。

………言えないけど。


……高校部だから、女子高生結構いるんだよね……


翔を信じてないわけじゃないけど、やっぱり嫌な気持ちはある。
雅紀に追っかけがいたころの、かずの気持ちが痛いほどわかる。

だって、翔にその気がなくたって、彼を好きになる人が現れることが問題なんだもんな。

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