
キラキラ
第32章 バースト 8
死ぬ思いで仕上げた課題を、厳しい顔でチェックするかず。
祈るような思いでそれを見守る。
間違えた箇所が五ヵ所をこえたら、そのページは、やり直しだなんて、うそみたいなルールをもうけられてるから、必死だ。
かずの赤ペンが、シャッシャッと、丸やバツを描いてるのがわかる。
ドキドキして胃がねじきれそう……。
「ん。合格。じゃあ、直しは家でしてきてね」
良くできました、と、穏やかに微笑んで顔をあげたかずに、「っしゃ!」と思わずガッツポーズかでた。
時計を見上げると、待ち合わせ時間まで30分をきっている。
全力ダッシュで行ってギリギリか。
「あれじゃん。跳んだらいいんじゃないの?」
雅紀がのほほんと言うけど、できるだけチカラは使いたくないんだよなぁ。
どんな弾みでバレるかわからないし。
特に俺の能力は、突然不安定になったりするから。
「大丈夫大丈夫。まだ間に合う」
ポケットにスマホと財布をいれて。
夜は大野家に泊まる予定だから、勉強道具は置いていけるから身軽だ。
残ってたミルクティーをイッキ飲みし、シンクにカップをおいてから、玄関に猛ダッシュした。
「じゃあ、行ってきます!」
「いってらっしゃーい」
「気をつけて」
かずと雅紀の声を背に、俺は流行る心を押さえながら、マンションの廊下に、走り出た。
夕方とはいえ、真昼の炎天下の暑さを十二分に残したアスファルトをダッシュ。
大野家のマンションから最寄り駅につくころには、俺はシャワーでも浴びてきたの?というくらいの汗をかいてた。
待ち合わせの駅はここから二駅。
電車車内のクーラーで少しだけ涼をとったものの、流れる汗はとまることがなく。
ハンカチで、額をふきながら、改札を抜ける。
駅ビルに直結する広場が、いつもの待ち合わせ場所。
遠目に、白いカッターの袖をまくり、黒のリュックを肩からかけてる、翔の姿が見えた。
