
キラキラ
第32章 バースト 8
「……おまえ、風呂上がり?」
近づいた俺をみて、翔の顔が緩む。
滝のように汗をかいてる俺は、ハンカチでおいつかない顔の汗を、肩で拭いた。
「……走ったから」
「このくそ暑いのに?」
「ギリギリまでかずに捕まってたんだもん……待った?」
「いや、俺もついさっき」
「ほんと?良かった」
安心した。
暑い……と、パタパタとTシャツをうごかして風を作ってたら、翔が、飲みかけだけど、とリュックからペットボトルを出してきた。
「見てたらこっちが脱水になりそう。飲んどけよ」
「ありがと……」
正直喉がカラカラだった。
全部飲んじゃうけどいい?って聞いたら、翔は面白そうにどうぞ、と言った。
翔の好むメーカーの紅茶。
嬉しくてごくごく飲む俺を、翔がじっと見つめてる。
「……なに?」
最後の一滴まで飲みきり、ごちそうさまと蓋をしながら、たずねると、
「ん?なんか、おまえは相変わらずエロいなーと思って」
翔が、ニヤリと、笑ってとんでもないことを言うから、俺は固まってしまう。
「……どこが?何が?」
「全部。汗も喉も……なんならその首筋も。てかおまえの存在自体」
「……バカじゃねぇの」
……最近の翔って、ちよっと変態親父化してる気がする。
ヤバイぞ。
べっと舌をだしたら、翔は楽しそうに肩をゆらして笑った。
「ふははっ……さて。どこいく?」
腕時計を見て、翔が駅ビルを見上げた。
夕飯の前にブラブラするのが、いつものパターン。
俺は、顎に指をあてながら、フル回転で考えた。
どうしよう。
服もみたい、靴もみたい。
もうすぐ封切りの映画の原作もみたい。
まあ、でも、翔と一緒に、歩けるなら、ぶっちゃけなんでもいーんだけど……。
