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キラキラ

第32章 バースト 8


そのときだった。


「やだっ!櫻井せんせーじゃんっ」

「え、今日授業ないのー?」


至近距離で、キャピキャピした、けたたましい笑い声がした。

え?と振り返ったら、異常に短いスカートをはい
て綺麗にメイクした女の子たちが、まっすぐに翔に向かってきてた。


「……おまえら、塾がないからって、こんなとこチャラチャラ歩いてないで、帰って宿題しろよ」


翔が、苦笑いして応対してる。
誰だよ?と思うより先に、話の内容から察した。翔の塾の生徒みたいだ。


……ほらね、だからやなんだよ。


明らかに、翔に会えて嬉しいオーラを出して、ぐいぐいと迫ってくる子達は、完全に俺のことはアウトオブ眼中。


いや、ここにいるの翔一人じゃねーし。
連れいるの、見えてんの?
俺が先に翔といるんだけど。


てめーら、はやくどっか行けっての!


翔に、まとわりつく女子高生たちを見つめてるうちに、胸の底に封印していたモヤモヤした気持ちが、音をたててぶち破り外に流れ出してきた。
どんどん不機嫌な顔になってゆくのが自分でもわかったけど、とめられない。


翔が、ハイハイとあしらって、なんとか話を切り上げようとしてるのに、翔に会えた嬉しさなのか、女子高生たちは離れようとしない。


ムカつく……すげームカつく。


「……翔、俺、先に行ってるね」


だけども、同時にそういう風に思う自分が嫌で。

みっともない顔をさらしたくなくて、身を翻した。

だめだ、こんなの。
ただの痛い男じゃん。
こんなの翔が一番嫌うよね。


「あ、おい潤!」


翔の呼び止める声を無視して歩き出そうとしたら、


「え、松本くん?」


きいたことがある声が俺の歩みをとめた。


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