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キラキラ

第32章 バースト 8


翔は、ヨッコラショーと、おどけたような台詞とともに俺の隣に座った。

自分用に買ってきたスポドリの蓋をあけ、そのままごくごく半分ほど飲み、ふーっと息をついてる様を、ぼんやり見つめてると、翔はニヤリと笑って俺を見やった。



「ま、結果オーライかな。海、おまえと来たかったから」

「ごめん……」



いろんな意味をこめてもう一度謝った。

不安定な気分で、簡単に意識が緩むのは毎度の事なのに。
今回も下手すれば、たくさんの人の前で跳ぶとこだった。
翔がいなかったら、と思うとゾッとする。


それに……せっかく翔が生徒と話をしてたのに、俺が水をさしたみたいなもんだし……。


「いや、俺こそ悪かった。あいつらいつもああなんだ。俺をからかって遊んでるだけ。……ごめんな」


俺がしょんぼりしてる理由が、ほったらかしにしていたことだと思ってる翔は、そう言って俺の頭をくしゃりと撫でた。


いいや……そういうことにしておこう。
知念先輩のことは、保留。
あとで考えればいい。


俺は、ずきずきする気持ちから目をそらし、翔の手のひらの温かさに体を寄せた。

買ってきてもらったスポーツ飲料の蓋をあけたら、微炭酸のものだからか、プシッと音がする。
小さく飛び散る滴が、気持ちよかった。



「……元気な女の子ばっかだね」


一口飲んで呟いたら、翔は心外だというように、首を振った。


「うるさいというんだ、あんなのは」

「でも可愛いでしょ?」

「……何が言いたい?」


ちょっとだけ拗ねてみたくなった俺が言った一言に、翔が面白そうに俺をのぞきこんだ。


「だって……」

「俺は、お前以上に可愛いやつを見たことがない」

「……」

「キスするのも、愛し合うのも、お前以外とは考えられない」

「翔……」

「拗ねてんのか?」



翔が俺の肩を抱いた。



「……別に」

「こっち向けよ」


ぷいと顔をそむけたら、翔の手が俺の顎をつかんで、もとに戻された。

仕方なく翔の顔を見上げる。
俺を見つめる翔の優しい目が、嘘いうなって言ってる。
その瞳に、促されて。


「ちょっと……拗ねてる」


小さく言ったら、翔が嬉しそうに笑った。



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