
キラキラ
第32章 バースト 8
「たまには、拗ねられるのも嬉しいもんだな」
「……そういうもん?」
「そういうもん」
嬉しい?
俺には理解できないけど。
じとっと、翔の顔をねめつけたら、翔は、ふっと深く笑み、ゆっくり顔を傾けてきた。
「……っ……外だよ」
何をされるのか察した俺は、慌ててその顔を押し戻そうとしたけれども、翔は、素早く俺の腕をつかみ、俺の唇に自分のそれを……重ねた。
「……」
しっとりと合わさる唇。
ぴくりと跳ねた体を、ぐっと抱き寄せられ。
舌を絡ませあう、思考がとまるような深いキスではないけれど、柔らかくて、優しくて……愛情深い……そんなキス。
見られたらどうすんの……と、思ったけど、翔の頭越しにみえる空は、紫に染まり始めてて。
確実に夜空にうつりゆくこの場所は、自分達の姿も、闇に包まれつつあるから、みえないんじゃないかと思った。
「お前が一番だよ……」
「……ん……」
キスの合間に囁かれ………俺は、ゆっくり目を閉じた。
翔の香りと、翔の腕の力強さだけを感じながら、力をぬく。
吐息とともにあわさる唇は、徐々に深くなり……ついに押し倒されかけて、はっと我にかえって身を捩った。
外だし!!
「ストップ」
翔の胸を軽く押した。
翔は、囁くように言い返してきた。
「……誰もみてねーよ、どーせ」
「やだよ、ばか」
「ちぇ……」
しかし、これ以上は拒否されるのは想定内だったのか、翔はあっさり引き下がり、俺に覆い被さっていた体を起こした。
そして、はぁーと砂浜に足を投げ出して空を見上げた。
俺も、翔にならって、藍色の空を見上げる。
星がいくつか確認できる。
俺らの住んでる街からみえる空に比べ、水平線の向こうまで広がるこの大きな空は、不思議と心が落ち着いてゆくものだった。
自然を前にすると、自分がいかに小さいものか、感じることができる。
うじうじ悩んでることも、ほんとはとるにたりないことなんだろうな……。
