テキストサイズ

キラキラ

第32章 バースト 8



ぼんやりしていると、翔がぽつりと呟いた。


「なぁ……潤」

「……ん?」

「知念を知ってんのか?」

「うん……同じ学校」

「なんか言われたのか」

「……なんで?」

「いや……あいつと喋ってて跳んだろ?お前」



よく見てるなぁ……。

内心舌をまきながら、当たり障りのない理由を探す。


「櫻井先生かっこいいって。言われた」

「……そんだけ?」

「……うん」

「……別に跳ぶ原因はなさげだけど?」

「…………俺もかっこいいな、って思ったらドキドキして」

「はあ?」



翔が、目を丸くしたあと、ぶっと吹き出した。


ほんとは、翔と繋ぎを作りたいと言われたんだけど。
……それはまだ本人には言いたくなかった。


翔は俺の頭をくしゃくしゃ撫でて、ぷくくっと笑ってる。


「いちいちそんなんで跳んでたら、おまえあの場所に住めなくなるぞ」

「うん……気を付ける」


俺は曖昧に笑ってうつむいた。
そんな俺の様子に、翔はふと笑みをおさめて、
俺をのぞきこんだ。


「……いらないこと考えてないよな?」

「……ん?」

「俺はお前以外に興味はないからな」

「…………うん」


こくりと頷くと、よし、と言って翔に肩を抱かれた。

広い胸。
何よりも安心できて、いとおしいこの場所。


こんな日も落ちた暗闇で、砂浜に座ってるのが、男同志であることなんか誰も気づかないだろうな。

そう思った俺は、こつんと翔の肩に頭を乗せた。


世界が俺たちだけならいいのにな、と、ありえないことをぼんやり考える。


俺たちはしばらく波の音を聞きながら、寄り添っていた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ