
キラキラ
第32章 バースト 8
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自室で、かずにだされた課題に頭を悩ませていると、スマホが、軽快な着信音を鳴らした。
髪をかきあげながら手にとって確認すると、そこには雅紀の文字。
…………?
なんだろ。
画面をなでて、通話状態にした。
「はい」
「あ、今いい?」
名乗らずにいきなり本題が、せっかちな雅紀らしい。
俺は苦笑して、うんと言った。
だが、
「ユーリ先輩と最近会った?」
いきなり爆弾をおとされて、スマホを取り落としそうになる。
俺は慌てて指に力をこめた。
「……あ、うん。街で偶然」
「なんかさ、おまえに頼んでることがあって、経過報告聞きたいから連絡先教えてほしいって言われたんだけど」
……マジか。
そっちから攻めてきたか。
いっそ、このまま会わなかったら、この話も立ち消えるだろうと期待していたのに、雅紀の方から連絡をつなげてくるなんて……。
本気だな……知念先輩。
俺が黙ってるのが気になったのか、雅紀が遠慮がちに、「どうした?」と聞いてきた。
「……いや……」
「なに?気が進まない?断っちゃおうか?」
雅紀はなにかを察したのか、気を使って、断りの選択肢をいれてきた。
でも、それは雅紀にとっては都合悪いんじゃないかな、と思った。
直の先輩のお願いを断るってなかなか勇気いるよな?
俺は、雅紀にわからないように、小さいため息をついた。
「いや……大丈夫。いーよ」
「……なにを頼まれたの?」
一瞬、言葉につまったが、
「……ちょっと共通の知り合いがいて」
翔のことだけど。
人物の名前だけ心で呟いたら、雅紀は不審がることもなく、納得したみたいだ。
「……ふうん……わかった。じゃあ近々電話あると思うからよろしくね」
……ずっと電源切っとこうかな、と、できもしないことを考えながら、俺はまた、小さく息をはいた。
