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キラキラ

第32章 バースト 8


ところが。


……っ


雅紀の電話を切って、きっちり15分後に見知らぬ番号がディスプレイに浮かび上がる。


いや、はえーな!!


俺は、うんざりした気分でスマホをじっと見つめた。

さあ、出ろ、それ、出ろ、と言わんばかりに鳴り続ける着信音。


マジかよ……


俺はスマホを目の前に、動けずにいた。


100パーセント知念先輩だと分かってるから、でなきゃと思うのに、指が動かない。

だって、なんて言っていいのかわからない。
……翔に話してないのだから。

どうしよう……。


考えてもどうしたらいいのか答えがでなくて。
うじうじしてるうちに、1分くらい鳴り続けたスマホがようやく着信をとめた。


俺は、知らず詰めてた息を、はぁ……と吐き出した。
額にじっとり汗をかいてる。
心臓もバクバクしてる。


なんとかしなきゃな……


モヤモヤした気持ちでいたら、再び同じ番号が浮かび上がり、着信音が鳴り出した。


……しつけーな……


もう一回シカトしようかと思ったけど、このままだと、俺が出るまで鳴らされ続ける予感がして。


くそっ……どうにでもなれ


意を決して、画面をなでた。


「……はい」

「松本くん?……知念ですけど」

「ああ……こんばんは」

「こんばんは。相葉に番号聞いたの。突然ごめんなさい」

「いえ、さっき雅紀から確認の電話あったんで……大丈夫です」

「あの。こないだのこと櫻井先生に聞いてくれた?」

「あ……えっと、まだなんです。すみません」


俺は、正直に言った。
誤魔化しも嘘もつけないなら、俺の言えることを言うしかない。

すると知念先輩は、


「じゃあ、来週の金曜日の塾が始まる前の1時間だけ。あけてもらえませんかって聞いてくれる?」

「え…」


金曜日……。


「塾の日だから、たとえ、櫻井先生に恋人がいたとしても予定はいれてないだろうし。思い出作るだけなの。お願いできないかな」

「……えっと」

「塾の近くに、コーヒーの美味しいお店があるの。そこで待ってますって言って?」

「………」


金曜日……俺の誕生日。



「松本くん?」



俺のために休んで、と。
翔に言えなかったことを今さら後悔する。


おれは、震えそうな声を必死でこらえて。


「………分かりました」


……そう言うしかなかった。


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