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キラキラ

第32章 バースト 8


Sho



「……おまえ、それマジでいってんの」


思わず低い声がでてしまう。

電話の向こうで潤が息を飲む気配がしたのに気づき、俺は首を振って落ち着け、と自分に言い聞かせた。

怒ったらダメだ……怒ったらダメだ。

呪文のように唱えて、必死で平静を保とうと頑張ってんのに。


『……1時間だけだって』


こいつは、事も無げにそういうことをいう。

あのさ……バカじゃねーの。
俺の大事な時間はお前のためにあるの。
そんなキャピキャピした女子高生のために割いてやる時間なんかねーの。

それ、説明しなきゃ、だめなのか?


「いや……時間は関係ねーだろ」

『だって……』

「俺がいいぞ、とでも言うと思ったのか?」

『…………』


ああ、ダメだ。
こんな言い方したら。

潤はきっと、困ったような顔で固まっている。
か細い呼吸音があいつの緊張を物語ってる。
大方、俺を怒らせた、と慌ててるのだろう。


……しかし。
こんな依頼、俺が二つ返事で受けるとでも思っていたとしたら、それはそれでショックだ。


お前の恋人は誰だ?


なに、そんなキューピッドみたいな役割引き受けてんだって話。


俺は、頭をかきむしりたい思いで、深いため息をついた。


「……知念に、俺には恋人がいる、って言ったんだろ?」

『…………言って……ない』

「は?!なんでだよ?」


小さく返された言葉に思わず噛みついた。


「櫻井先生には恋人がいます。だからだめですって、言えばすむ話だろうが!」


『……だって……』

「だって、なんだよ?!」


思わず怒鳴ってしまってから気づく。

……潤が泣きそうな声になってる。


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