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キラキラ

第32章 バースト 8


いやいや……無駄じゃないって。


俺は、どう言えば分かってもらえるのか、と、うーん……と、天を仰ぐ。

潤の言うことも分かる。
でも、それは相手の都合を加味しすぎだろ。

俺の意思は?
お前の思いは?

おまえは、俺が女子高生とお茶してもかまわないのか?

俺は、唇をかんで、静かに潤を諭す。


「……それでも、俺が嫌だって言えば相手はあきらめるんじゃないか?」


そうかもしれないけど……、と潤は小さく続ける。


『翔は優しい人だから。……多分直接お願いされてたら断ってないでしょ……?』


「………」


『一回だけ。お茶だけでいいからって言われて無下にできる人じゃないでしょ』


「……昔の俺ならそうかもしれない。でも、今はお前が最優先なんだけど」


『……ありがと』


潤は、ふふっと笑って、でもね……と続けた。


『知念先輩は雅紀の先輩なんだ。だから……あまり冷たくもできなくて。……ごめんだけど、一時間だけ行ってあげてくれる?』


ここまで言われたら、嫌でも頷くしかない。
俺は、はぁ……とため息をついた。


「……金曜日か?」

『うん……そう』

「お茶だけだな」

『うん……』

「………わかったよ」

『……ごめん。よろしくね』



……おまえはそれでいいのか?

揺れる声音を悟らせまいとしてるかのように、ポツポツとしか喋らない潤が気になる。

こいつは、変に我慢強いし、俺に我が儘を言わない。
本音を隠して隠して……きっと影で泣くんだ。

わかってんのかな……
恋人には、少々我が儘言われた方が嬉しいもんなんだけどなぁ。

お前が、お茶なんか絶対行くなって言ってくれたら、俺は絶対行かないんだぞ……?

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