
キラキラ
第32章 バースト 8
店内を見渡せば、一番奥のテーブル席に座ってた女の子が立ち上がった。
俺の生徒だ。
……つか、一人って。
俺は、内心頭を抱えた。
知念と二人じゃなかったのかよ。
……これはまずい。
二人と一人じゃ意味合いが違ってくる。
一対一でお茶してる所を誰かに見られでもしたら……あまりよろしくないな。
その俺の想いがまんま顔に出たのだろう。
立っていた……小瀧が、ごめんなさい、と頭を下げた。
俺は、困ったように笑んでみせた。
「一人?」
「……はい」
小瀧は泣きそうな顔でコクリとうなずいた。
小瀧は……塾で、知念といつも、行動を共にしている子だ。
成績もそこそこいいし、背が高くて目立つから、割と早い段階で名前と顔を一致して覚えることができた。
いつも知念と二人で、ニコニコして俺に絡んできてたけど、今、目の前にいる彼女は、気の毒なくらい顔が強ばってて、苦しいくらいの緊張が伝わってくる。
「……ユーリが、せっかくだから一人で行けって、ついてきてくれなかったんです。あの……私だけじゃダメですか」
「……いや、ダメ……ではないけど」
「絶対迷惑かけませんから。勉強のことで相談にのってもらったことにしますから!」
必死な顔。
恋をしてる人ってどうしてこんなに一生懸命になれるのだろう。
その人にバカがつくほど夢中になれるんだよな。
………俺もだけど。
俺は、ふっと笑って頷いた。
…仕方ないか。
潤との約束だしな。
「分かってる。塾が始まるまでな。おまえ、今日の課題はやってきたのか」
小瀧は、ホッとしたような笑みを浮かべて、頷いた。
「はい。もちろんです!」
俺が、よしと言うと、小瀧は嬉しそうにはにかんだ。
