
キラキラ
第32章 バースト 8
いつもどおり授業を終えて、家に帰った。
「……ただいま」
リビングでテレビを見ていた、かずと智兄が振り返った。
「おかえり。早かったね」
かずがいうから、怪訝に思い時計を見上げた。
10時に授業が終わって、すぐ帰ったから、いつもと同じくらいだけど。
「そうか……?あー腹へった……」
キッチンに入り、朝作っておいたビーフシチューに火をいれる。
かずと智兄は先に食べてもらっているから、俺は自分の夕食分を用意にかかった。
フランスパンを切ってると、かずが、あれ……?というように歩み寄ってくる。
「……夕飯。食べてないの?」
「…………なんで?今日は塾だから食べる暇なんて……」
「潤くんと会ってたんじゃないの?」
「いや、あいつは今、風邪ひいてて……」
あー、なんだ、そっか、とかずが残念そうな顔になった。
「誕生日に風邪なんてついてないね。潤くんも」
俺は、パンを切る手がとまった。
「……誕生日?」
「うん。相葉くんが言ってた。潤くん、今日誕生日なんでしょ」
だから、てっきりデートして帰ってくるのかと……と、いうかずをまじまじと見つめた。
俺が無表情になっているから、かずが怯えたように後ずさる。
いや、まて。
俺の頭のなかは、今、すごい勢いで情報が処理されていってんだよ……。
誕生日というワードと。
潤というワード。
俺は、ノロノロと手を洗いながら、呟いた。
「すげーこと言っていい……?」
「……?うん」
「俺、あいつの誕生日、今知った」
「…………」
えええええ!!!
一呼吸おいて、叫んだかずの口を慌ててふさぐ。
夜だぞ!
「モガ……翔さん、どゆこと……」
俺の手をはずしてかずが必死な顔をして俺を見上げるが、あいにく俺は自己嫌悪の沼に頭までつかってるから理由も言いたくない。
誕生日の話題……そういえばあいつとしたことなかった。
それだけのこと。
「冗談でしょ」
「冗談でこんなこと言えるか……」
俺はアプリを開いて、潤に、会いたい、と打ち込んだ。
