キラキラ
第5章 hungry
二宮は、一年生だが、その物怖じしない性格と、愛嬌で、あっというまに、俺らの懐に飛び込んできた、時に、小生意気で、時に、可愛らしい後輩である。
かといって、調子にのっているわけでもなく、ひくところは、ひき、先輩をたてる場面などの、勘の鋭さも絶妙だ。
本人の前では言わないが、雅紀は、すごく二宮を気に入ってて、次期キャプテンは、こいつかなと既に目星をつけてるしまつだ。
実際問題、バスケの腕前もなかなかで、その冷静な判断力は、ゆくゆくチームの司令塔として発揮してもらおうと、俺らも考えてる…のは、内緒。
「ああ…大野さんのことか。綺麗な人だろ。井ノ原先輩の友達だよ」
「へえ……なんか、1年みんなザワザワしてましたよ。見たことない美人がいる!って」
「お前ら、練習中そんな話してたのかー?」
「だって、目に入りますもん」
しょうがないやつらだな、と、ぱくぱくぱくと三口でメロンパンを平らげた雅紀は、次に二個入りのカレーパンの袋をあけて、二宮に差し出した。
「一個食う?」
「あ。ありがとうございまーす!」
二宮は、嬉しそうに手を伸ばした。
男にしたらつくりの小さい口をしてる二宮は、中身をこぼさないように苦戦しながらかじってる。
その様子がなんだか可愛くて、雅紀と俺は顔を見合わせて笑った。
「……でも、あれですよ。大野さん、なんかずーっと櫻井先輩見てましたよ」
最後の一口をモグモグしながら、二宮は言う。
俺は、お茶を飲みかけて、思わず顔をもとに戻した。
「……え?」
「ほんとですよ。試合形式のときなんか、それは楽しそうに目で追ってましたよ」
手についた油をペロッとなめて、あー美味しかった、ごちそうさまでーす!と、二宮は一礼して戻っていった。
「……井ノ原先輩が、なんか吹き込んだかな?」
「翔ちゃんは、上手いって話してたんじゃない?」
「別に、うまくねーし……」
口を尖らせると、雅紀は、優しく笑った。
「翔ちゃんは上手いよ。もっと自信持ちなよ」
「お前とのコンビプレーは、自信あるけどな」
どや顔でいう俺に、雅紀は、ふふっと笑って、ゴミ箱めがけて、くしゃくしゃにしたパンの包み紙をほおりなげた。
それは、きれいな放物線を描いて、ゴミ箱に入った。
「ナイッシュー」
手を叩いてやると、にやりと笑って、雅紀は、親指を立てた。