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キラキラ

第5章 hungry

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昼休み。

早々に弁当を食べ終えたものの、まだたりないから、食堂でも行こうかな、と教室をでて、ふと、足をとめた。

「あれ……?」

本来ならこの校舎にいるはずのない人を見かけた気がして、俺は反射的に走りだした。

つきあたりの東階段に一瞬見えた、細身の美形。

まさか……

教室前から階段までダッシュする。

上か下か。

直感で下と判断し、バタバタと駆け降りたら、その人は、くるりと曲がったところの踊り場で立ち止まり、何事か、と、こちらを振り返ってた。

「やっぱり……大野さん」

「……櫻井」

大野さんは、一瞬、驚いたように目を丸くしてから、ふっと笑顔になった。

俺は、その顔に目を奪われる。

……うわあ、やっぱりこの人綺麗だ。

「……あ、昨日は、ありがとう。いいもの見せてもらったよ」

「……いえ、そんな。練習見てるだけだからつまらなかったんじゃ……」

「ううん。櫻井、すげーカッコ良かった」

……カッコ良かった、だなんて、久しぶりに言われたぞ。

しかも、その容姿で、そんな笑顔で、首をちょっとかしげて、この台詞。

男だらけのこの学校に、すっかり染まってしまってる俺をドキドキさせるには、充分すぎる。

なんだ、これ。

男相手に、ドキドキ?

ヤバイ。俺はその趣味はない。

俺は、慌てて本題を切り出した。

「いや、あの、大野さん、なんでここにいるんですか?」

俺ら二年の校舎は、一階に、生物実験室と物理実験室があるが、二階、三階は全て二年の教室なので、上階に、別の学年が上がってくることはまずない。

三年生である大野さんが、誰かに用事がない限りはここで会えるはずがないんだ。

「提出書類がまだ残ってたらしくて、事務室に行きたくて。井ノ原は、委員会の呼び出しかかっていなかったし。それなら、一人で行ってみようかなと思ってさ」

「………そもそも校舎が違いますよ」

「え?そうなの?」

クスクス笑って指摘すると、大野さんは、あれ?と、困ったように、肩をすくめた。

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