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キラキラ

第32章 バースト 8


「…………ふう……」


集中して、自分のチカラを内から引きずり出す。


自分でうまくコントロールできさえすれば、俺の能力って、こういうときはものすごく便利なんだよな。
一瞬息をとめたら、もうそこは大野家の玄関前。


かずも心得たもので、すぐに扉をあけてくれた。

「いらっしゃい。助かった」




「……翔は?ダウンって……熱あるの?」


廊下を歩きながら、翔のエプロン姿のかずに聞くと、かずは、うーん……おそらくね、といって顔をしかめた。


「本人は隠してたんだけど、朝、智さんが気づいたんだよね。今すぐもう一度寝ろって。だいぶ抵抗してたけど、最後は、潤に言うぞって脅されて」

「俺に……?」

「多分だけど……違ったらごめんね。あれ、潤くんの風邪うつったんじゃない?……あの人丈夫が取り柄らしくって、ここ何年も寝込んだことないもん」


こないだキスでもした?


と、いたずらっぽい顔をして俺を見据えるかずに、俺は真っ赤になった。

それが答えだと言わんばかりの反応に、かずは声をたてて笑った。


「潤くんが知ったら、また気にするから言いたくなかったんだろうね。でも、夏休み、ずっと忙しかったから、たまにはこうして休むのもいいかもって思う」

俺の家事スキルじゃちょっと頼んないけどね……。


かずはそういって、鍋の中のカピカピの御飯を見せた。

俺は苦笑い。


「……それ、雑炊に作り直そうか」


キッチンに入り、冷蔵庫の中身をチェックさせてもらった。





勝手知ったる翔の部屋に、そっと入る。

昨日までの俺の部屋と同様に、空調の音だけしか聞こえない静かな空間。

足音を忍ばせて翔のそばによると、翔はおでこに冷却シートを貼られ、すやすや眠っていた。

枕元に座り、翔の寝顔を見つめる。

理知的な大きな瞳は、閉じたらとたんに幼くみえる。
いつも、艶やかな声で俺の名を呼ぶ唇は、少しカサついてて。

俺は手を伸ばし、その唇に触れた。

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