テキストサイズ

キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


「あいつは、どうだ?」

「……あいつって?」

「櫻の国の……」

「ああ……ショウ?」


脳裏をかすめるのは、穏やかな笑顔と、大きな瞳。
俺を好きだと、言ってくれたかの国の王子は、時々山のように贈り物を送ってくる。

いつかお会いしたい、と文も添えて。
その便箋からは、いつも微かにいい香りがして。俺のなかのあいつの記憶を呼び起こす

ミヤと行ったあいつの誕生日会。

まあ、いろいろ事件はあったのだが(第23章🌟🌟🌟参照)最後に思い出すのは、絶対に俺を振り向かせてみせる、と自信に満ちた笑顔だ。

あの笑顔はなかなかに好ましかった。

うんでもまぁ……
ほんとに振り向く日は未来永劫ありえないけど。


「……ないなぁ」


ぼそりと呟いたら、ジュンイチは、はははっと笑った。


「バッサリだな。気の毒に。ショウのやつ本気だぞ?」

「なんで知ってるの?」

「この間、櫻の国に行く用事があったから、会ってきた。なんでお前を連れてこないんだ、とさんざん責められたぞ」

「ふーん……」


興味なさげな相槌に、ジュンイチは、また笑った。
ショウとジュンイチは、昔から仲がよい。
恋バナなども当然しているのだろう。

自分の友達が、妹のことを想っているなんて、どんな気持ちなのだろうな……。

俺がぼんやりとそんなことを思っていたら、ジュンイチが俺をのぞきこんで、いたずらっぽく男前な顔を寄せてきた。



「おまえ、松の国のジュンにも求婚されてるんだろ」

「……うん、まあ」

「この二人から想われてるなんてすごいことだぞ」

「そうかなー……」

「どっちかと結婚すんのか」

「ううん……しない」



俺は、ミヤ以外の男に心を預けるつもりはない。

心できっぱり言うと、ジュンイチは、あきれたように、はぁ~とため息をついた。
おまえは、全く……と言って、ガリガリ頭をかく。


「でもな、おまえももういい年だろ。いつまでも結婚しないなんて、言ってもいられないし、下手すりゃ父上が勝手に縁談もちこんでまとめるかもしれないぞ」

「…………」


……それは俺も懸念していた。
いつまでも、一国の姫がブラブラしてるわけにもいかないだろう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ