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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


「……夕方に帰れば良かった……」

「……正直ですね」


ガーン……という顔をしてるマサキに、思わず笑ってしまう。
ミヤ目当てなのだから、あいつがいなかったら、我が家のディナーに残る理由はないってことだろ。
父上たちが知ったら嘆くぞ(笑)

俺は苦笑いしてたしなめた。


「……一応、あなたは、私の相手として迎えてるみたいだから、そうガッカリせず、ゆっくり食べてお帰りくださいな」

「……はい……ていうか、サトコさまの城の食事はいつもびっくりするくらい美味しいんですよね。それはそれで楽しみです」

「でしょう?」


俺は、シェフのカトリーナをほめられたみたいで嬉しくなり、微笑んで頷いた。
今日のメインはなんだろーな、と腹の虫とともに考えてると、


「あらあら、若い子どうし仲がよくていいわね」


なにも知らない母上が、通り抜き様に穏やかに声をかけてきた。
マサキが、百点満点の愛想笑いをうかべて、そうですか?と返してる。

こいつも、喰えないよなぁ……完璧に俺を利用してるもんな。


ふん、と鼻をならしてると、母上が、あ、そうだわ、と立ち止まって、俺を振り返った。



「サトコ。さっきね、タエから便りが来たの」

「……?はい」


タエとは、母上の身の回りのお世話をしている女性たちを統括してる人だ。
つまり、ミヤの母親である。
余談だが、俺が男であることを知ってる数少ない人間の一人だ。


母上が残念そうに眉をしかめてるのをみて、嫌な予感がする。


「しばらく暇をください、って。だから、いいわよ。最後にきちんと自分の親のお側にいてあげなさいって。返事をしといたからね」

「…………はい」



……と、いうことは、ミヤも当分帰ってこないってこと?


母上が歩いていくのを、黙りこくって見つめてる俺に、マサキが気遣わしげな目を向けた。


「……サトコさま」

「……なに」

「……元気だしてください」

「別に……俺……私は」

「……俺……二、三日、この国にいましょうか」

「……いーよ」

「寂しいでしょ?話し相手にはなりますよ」

「…………」



ジュンイチは、明日から遠方の国に公務ででかけてしまうから留守になる。


「いたければ……いたらいーじゃん」


姫の仮面をかろうじて保ってる俺は、可愛くもなんともない言葉を吐いた。





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