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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


「ミヤのことを悪く言わないでください」


じっと見つめるジュンに対し、俺は思わず言い放った。


「ミヤのためじゃない。私が行きたいから行くんです」

「どうしてそんなにこだわるのです。おばあ様に会いに行っただけでしょう?そんなに心配することはないように思えますが?」


……ジュンのいうことももっともなんだけど。

俺は、ざわざわしてしょうがない自分の想いを、一生懸命に言葉にした。


この胸騒ぎ。
この嫌な予感。


きっと俺にしかわかんないんだ。


「……ミヤは、あいつは……本来こんなことするやつじゃないんです。こんな何日も音信不通とかあり得ない。私に連絡をよこさないんじゃない。寄こせないんじゃないかと思う」

「……でも……もう少し待つことはできないのですか?」


ショウがたしなめるように間に入るが、俺はフルフルと首をふった。


「1ヶ月待ちました。一週間の予定を1ヶ月。悪いけどもう待てない」


ジュンが険しい顔で腕組みをする。


「……肝心のミヤの家はご存知なんですか?」

「城下町にある唯一の花売りの店ときいてます。とにかく……顔が見たい」


ショウとジュンが顔を見あわせて、なんともいえない顔をしてる。


俺は唇をかみしめて、祈るような思いでじっと二人を見つめた。

お願い……もうこれしか方法がない。

一人で出かけるなんて、父上も母上も絶対許してくれないもの。

だけど、王子のどちらかをカモフラージュにして、出国さえしてしまえば、そのままどこにいこうと自由。
うちの馬車使ってもらわないといけないから、御者には迷惑かけちゃうけど。


「……ちょっと待っててくださいね」


ショウが断り、ジュンが頭を下げ、二人で部屋を出ていった。


俺の頭のなかでは、断られるという選択肢は、もはやない。

どっちの王子が俺をのせてくれるのか話し合いしてるのかなどと、都合よく解釈すらしてる。

俺は、すっかり冷めた紅茶のカップをぎゅっと握った。

目を閉じれば、ミヤの笑顔が浮かぶ。
耳をすませば、ミヤの声が聞こえる気がする。


ミヤ……会いたい。


「会いたい…………」


口にしたらますます寂しくなり、目尻から一筋の涙がおちた。

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