
キラキラ
第33章 🌟🌟🌟🌟🌟
「……サトコさまは……?」
心配そうに聞いてくる母さんに、俺は、うん、と
頷いた。
「とりあえず……周りの人間に、当たり障りのない範囲で、サトコさまのことは伝えてきたけど、サトコさまご自身に最低限のことは全部自分でやるから、とつっぱねられました」
苦笑うと、母さんも、そうね……と頷いた。
「サトコさまの場合は……あまり他のものが体に触れないほうがいいから、お着替えも手伝わない方がよろしいでしょうしね……」
サトコさまが性別を偽ってることを知る人間は、お妃さまと母さんと俺だけだ。
サトコさまの着替えや湯浴みなどを、他のものに見られたら終わりなのは十分にわかってる。
従って、そこらへんは俺もサトコさまも、これまで慎重に行動してきた。
その意識があれば、少しくらいの期間ならば、サトコさまお一人でも……大丈夫だろうと思う。
幸いにも線の細いサトコさまを、男かも、だなんて思うような輩は今のところ現れていない。
見てくれは可憐な姫様だから、疑いようもないのだろう。
ただ……最近キレると男言葉になるから、ヒヤヒヤする場面も多いと言えば多い。
マサキ様やショウジュンなんかが、違和感を感じなければいいな、と思う。
ばれたら、お家騒動ものだもんなぁ……。
「……これは、我々が死ぬまで秘密の案件なのですか?」
気になっていたことだ。
すると、母さんはその綺麗な眉をひそめて、難しい顔をした。
「始まりはヨシノ様なのだから……ヨシノ様の指示次第。私たちは従うだけよ。……だけど、サトコさまはどうなのかしらね。女の姿が窮屈だとか……おっしゃってる?」
母さんの気遣う言葉に、俺は、屈託のない笑顔でケーキを頬張るサトコさまを頭に浮かべて、首を振った。
「……いいえ……今のところはそうみえません」
むしろ、楽しんでるようにすら見えるしな。
「そう……それならいいのだけど……」
そのとき。
コンコンコンと、入り口をノックする音がして、母さんと俺は同時に振り向いた。
