
キラキラ
第33章 🌟🌟🌟🌟🌟
たずねてきそうな人物に心当たりはない。
おばあさまを、よく知る近所の人間なら、もうひとつある生活用の出入口に来るはず。
今、ノックする音がしたのは、花売りの店舗の扉だ。
花を買いに来たお客さんかもしれないな、と思った。
入り口と、今、自分達がいる部屋の間のフロアに、本来ならば、大小のバケツに、様々な花が所狭しと並べられているはずで。
だが、残念ながら、おばあさまは、ずっと体調が悪いから、フロアは薄暗く、がらんとしている。
当然ながら、バケツはどれもこれも空っぽだ。
ここに到着した日に、残っていた枯れた花は、全て処分したし。
「誰かしら……?お花はないわ……」
「いいよ。俺がでます」
不安そうな顔になった母さんを制して、俺は立ち上がった。
フロアを足早に通り抜け、カーテンをめくり、カラカラとサッシになってる引き戸をあけ、顔を出した。
「……はい」
てっきり、町の人が花を買いに来たのかと身構えて出てみたら、予想に反し、一人の男性が立っていた。
一目見て、一般人じゃないと直感で思った。
鋭い目。手入れされた髪。
何より、この人の持つ風格が、普通の人間ではない。
来てる服も高価で、まるで貴族のそれだ。
なんで……こんなところに?と思いながら、
「すみません。今、店主の具合が悪くて、店閉めてるんです…」
断ってみるが、男性は何も言わなかった。
驚いたような顔でただ突っ立ってる。
