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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟




「あの……?」


石のように微動だにせず、その人は俺をじっとみつめてきた。
その目が、お前は誰だ、とでもいっているよう。

あまりに不躾な視線に、俺はなんだか不愉快になってきて、


「花はないので。すみません」


と早口に言って、扉を閉めようとした。


すると、その人が、慌てたようにすっと足を出して、閉めようとする扉をとめた。


は?なんだよ?!


不信感丸出しな顔になった俺に、その人は小さくすまぬ、と、言った。
そして、おそるおそるというように、



「……つかぬことを聞くが……ここに……タエという女性はいるか?」



……一瞬、いません、と言おうかと思った。
でも、何故だか、名前を知られていることに違和感を覚えて、


「……いたらなんだというんですか」


ケンカ越しに言い返した。


だって母さんと、ニノ国のこんな貴族がつながる要因ってある……?

なんだこいつは。


「申し訳ないが、呼んでいただけ……」


言いかけたセリフを途切れさせ、その人の目が、真ん丸になったのを見た。


「……?」


どうしたのだろう。と思ったタイミングで、なかなか帰ってこない俺を心配した母さんが後ろからやってきて。


「お花を買いにいらしたの?」

と、顔を出した。



「………タエ!!」


男性が絞り出すような声で母さんの名を呼んだ。


「…っ…タクヤさま!?」

母さんが、信じられないという声をあげた。

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