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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


Satoko



「……お世話になりました」


ああ……昨日のせいだ。
腰が痛すぎる……。


ともすれば座りこみそうなくらい怠い体だが、気合いで背筋を伸ばし、俺は深く礼をした。



「寂しくなるなぁ……また絶対に遊びにきてよね」


カエラが、残念そうに俺の手をとった。

振り返れば、ほんの一週間そこそこの滞在であったのに、彼女は、ほんとに俺に良くしてくれたと思う。

女の友達ができて嬉しかったって朗らかに笑ってくれる彼女のおかげで、俺はすごく救われた。

カズに会えたのも、あの日にお茶に誘ってくれたカエラのおかげみたいなものだしな。


「ありがとう。大の国にも、是非いらしてください」


ニッコリ笑い、次に俺はその後ろに佇むマリウスを見た。


「いろいろと……ありがとう」


彼は、黙ってお辞儀をした。

俺の身の回りの世話はおろか、カズとの関係性にまで気づいても、何も言わず、もくもくと職務を遂行した彼は間違いなく優秀な使用人だった。


「リョウ兄さまが、見送りにこれなくてごめんねって。……あと、カズも用事があるからよろしくって」

「……うん。ありがとう」


俺は、こっくり頷く。


「リョウ兄さまはしょうがないにしてもさぁ、カズはなんとか都合つけて見送りにくらい、来たらよかったのにね」


プンプンした感じで言ってくれるカエラを、笑ってたしなめた。


「いいんです……大丈夫」


だって、来るなって言ったの俺だもん。
顔見たら、絶対に泣いちゃうから。

この体の怠さと、昨夜の記憶は、カズに愛された証拠。

俺は、これを胸にしばらく頑張って生きていこうと思うよ。


だから、さよならは言わない。

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