キラキラ
第5章 hungry
***** ***** *****
六時限目終了のチャイムが鳴る。
待ってました、とばかりに雅紀が立ち上がり、鞄にガサガサと教科書や筆記用具をつめこんだ。
「さっ、翔ちゃん行こっか」
鞄を肩にかつぎ上げ、サラサラの茶髪をゆらして、今にも部活に出ていきそうだったから俺は慌てて声をかけた。
「悪い、今日は………」
「あ、さかもっちゃんの日だっけ?」
「ん。一時間だけ行ってくる」
「リョーカイ」
雅紀は、ぴっと二本の指を額の横にあわせ、それから飛ぶように教室を出ていった。
勉強よりもバスケ。三度の飯より………いや、同じくらい好きなバスケ。
バスケ馬鹿な雅紀らしいいつもの光景。
いつもは、その隣に肩をならべてる俺だけど、今日は寄り道だ。
俺も鞄をかついで、東校舎にある音楽室を、目指す。
音楽準備室の扉をノックするとら中から「はい」、という、いつもの低く響くいい声がした。
「失礼します」と入ると、この部屋の主である、音楽教師、坂本先生が机にむかってた体をこちらにむけた。
「お。待ってたぞ」
「難しいのは、ヤですよ」
俺は予防線をはる。
「お前なら、大丈夫だよ。えー……っと。これな」
坂本先生は、机に積み上げられた本の中から、ファイルを探しあて、俺に差し出した。
俺はパラパラと中身を確認して、げんなりする。
「難しいじゃん………」
「大丈夫だって。お前ならできる」
「簡単に、いわないでくださいよ」
うらめしげにねめつけると、坂本先生は大きな口を開けて、楽しそうに笑った。
坂本先生との、こういったやりとりは、一年前にさかのぼる。
入学当初、芸術の選択科目で、音楽を選んだ俺は、俺がピアノが弾けると知った雅紀らにそそのかされて、ちょびっと披露した。
誰もが知ってるおとぎの国のテーマ曲。
ほんのちょっとだ。
でも、それを聞いてた坂本先生が、音楽準備室からでてきたのが始まり。
坂本先生は目を輝かせて、続きを要求し、挙げ句、あれもこれもと弾かせ、ついには放課後音楽室への出動を命じたんだ。
戸惑う俺が、そこで聞かされたのは、坂本先生のプライベート。
プライベートで、歌を歌っているという坂本先生の練習のおつきあいに、ピアノを弾いてくれないかという。
断ろうと思えば断れたけど、坂本先生の歌声をきいて、俺はオッケーした。
六時限目終了のチャイムが鳴る。
待ってました、とばかりに雅紀が立ち上がり、鞄にガサガサと教科書や筆記用具をつめこんだ。
「さっ、翔ちゃん行こっか」
鞄を肩にかつぎ上げ、サラサラの茶髪をゆらして、今にも部活に出ていきそうだったから俺は慌てて声をかけた。
「悪い、今日は………」
「あ、さかもっちゃんの日だっけ?」
「ん。一時間だけ行ってくる」
「リョーカイ」
雅紀は、ぴっと二本の指を額の横にあわせ、それから飛ぶように教室を出ていった。
勉強よりもバスケ。三度の飯より………いや、同じくらい好きなバスケ。
バスケ馬鹿な雅紀らしいいつもの光景。
いつもは、その隣に肩をならべてる俺だけど、今日は寄り道だ。
俺も鞄をかついで、東校舎にある音楽室を、目指す。
音楽準備室の扉をノックするとら中から「はい」、という、いつもの低く響くいい声がした。
「失礼します」と入ると、この部屋の主である、音楽教師、坂本先生が机にむかってた体をこちらにむけた。
「お。待ってたぞ」
「難しいのは、ヤですよ」
俺は予防線をはる。
「お前なら、大丈夫だよ。えー……っと。これな」
坂本先生は、机に積み上げられた本の中から、ファイルを探しあて、俺に差し出した。
俺はパラパラと中身を確認して、げんなりする。
「難しいじゃん………」
「大丈夫だって。お前ならできる」
「簡単に、いわないでくださいよ」
うらめしげにねめつけると、坂本先生は大きな口を開けて、楽しそうに笑った。
坂本先生との、こういったやりとりは、一年前にさかのぼる。
入学当初、芸術の選択科目で、音楽を選んだ俺は、俺がピアノが弾けると知った雅紀らにそそのかされて、ちょびっと披露した。
誰もが知ってるおとぎの国のテーマ曲。
ほんのちょっとだ。
でも、それを聞いてた坂本先生が、音楽準備室からでてきたのが始まり。
坂本先生は目を輝かせて、続きを要求し、挙げ句、あれもこれもと弾かせ、ついには放課後音楽室への出動を命じたんだ。
戸惑う俺が、そこで聞かされたのは、坂本先生のプライベート。
プライベートで、歌を歌っているという坂本先生の練習のおつきあいに、ピアノを弾いてくれないかという。
断ろうと思えば断れたけど、坂本先生の歌声をきいて、俺はオッケーした。