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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


***おまけ***


Satoko



クシャンと大きなくしゃみがでた。


……誰か噂してんのかな。


鼻を何度かすする。

しばらくして、どこからか毒々しい匂いが漂ってきたことに気づいた。

え?と思って振り返ると、マリウスが大真面目な顔で、なにやら湯気のたつティーカップを持って立ってる。
嫌な予感がして、恐る恐る聞く。



「……それ、なに?」

「くしゃみをされてましたね。そのまま風邪をひかれたら大変ですので……私、おすすめの漢方のお茶をいれました」

「カンポウ?」

「東洋の薬と聞きます。くしゃみもすぐに治まるでしょう。さぁ……どうぞ」



……え、薬って。
てか、俺、ちょっとくしゃみしただけだけど?
心配しすぎじゃね?


「……あ、ありがと」


戸惑いながら受けとる。
黒っぽーいその漢方とやらのお茶からは、独特な香りが漂ってくる。


……すげー苦そうなんだけど!!


嫌だ、という意思表示を兼ねて、ちらりとマリウスを見上げると、彼は無表情に俺を見つめてる。
まるで、飲むまで逃がさないといった感じだ。

仕方なくカップにそっと口を近づけ、一舐めしてみると、なんともいえない香りが鼻をつき、顔をしかめてしまった。


「……にがっ」


すると、マリウスはすまして言った。


「良薬は口に苦しと申します」

「……なにそれ」

「東洋の言葉です」

「ふーん……」



……知ったこっちゃねーっつの。


俺は手元の液体を見つめた。
まずそうなことこのうえがない。



「ねぇ……これ、まさかとは思うけど、全部飲むの?」

「もちろんです」



小さな抗議をこめてみた言葉に、あっさりと頷かれ……くらっとめまいがした。


俺、くしゃみを一回しただけだぞ?!
大袈裟だろ!


反論しようと口を開けかけたら、


「サトコさまに何かあったら、カズナリさまに顔向けできませんので」

「…………」



カズ。



くそっ……切り札を出された。


俺はそのまま言葉を飲み込みざるをえなかった。

俺の操縦を心得た優秀な使用人は、にこりと笑って、もう一度、どうぞ、と言った。

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